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認知症ケアの現場では、「大変さ」や「難しさ」が語られることが多くあります。

もちろん、簡単なことばかりではありません。

うまくいかない日や、悩む場面もたくさんあります。

それでも、その日々の中には、思わず笑ってしまう瞬間や、心があたたかくなる関わりがたくさんありました。

認知症の方との関わりは、毎日同じようでいて、一つとして同じ日はありません。

その時々の言葉や表情の中に、その方らしさが確かにありました。

日常の中にあった自然な関わり

夜勤中、ふと起きてこられた方と、そのまま何気なく話し込む時間がありました。

特別なことをしているわけではなくても、一緒にお菓子を食べたり、冗談を言い合ったりしながら過ごす時間が、今振り返るととても大切な記憶として残っています。

「バカだねー」と笑いながら話してくださる方。

「いい子いい子して!」と言うと、優しく頭を撫でてくださる方。

顔を見ると、少し照れながら腕を広げてハグしてくださる方もいました。

家族面会中でも、横を通ると「きたきた!」と笑顔で手招きしてくださることもありました。

「ご飯食べてない」と言われて、

「お腹すいたー?」と聞くと、

「すいとらん」と返ってくる。

「じゃあ、ええやん(笑)また作るけ、待っといてー!」

そんな何気ないやり取りをしながら過ごす時間もありました。

「今時間ある?これ手伝ってほしいんやけど」

そう声をかけると、

「やってあげるよー」

と言いながら、自然と手伝ってくださる方もいました。

手伝い終わったあとには、

「このぐらいやったら、大したことない。いくらでもしてあげるよ」

と笑って言ってくださることもありました。

「私一人じゃ難しいもん(笑)おってくれんと困るわー!うちの右腕や❤️」

そんな風に冗談を言いながら関わっているうちに、気づけば、その方の方から何度もこちらのいる場所へ来て、話したり、手伝ったりしてくださるようになっていました。

介護をしている・されているというより、一緒に日常を過ごしているような、不思議とあたたかい関係性がそこにはありました。

関係性が変わっていく不思議さ

ある時は娘のように接してくださり、ある時は親友のように話してくださる。

時には嫁のように呼ばれ、「結婚しよーや」と冗談まじりに笑って言われることもありました。

嫁のように思われている時には、「おかあさん」と声をかけてみたり、

「親友!」と言われた時には、「ゆりちゃん!」と、あえてちゃん付けで返してみたり。

その時々の関係性に合わせながら、自然に会話をしていた場面もありました。

もちろん、介護現場では「〇〇さん」と呼ぶことが基本だと言われることもあります。

それも大切なことだと思います。

ただ、私はそれが全てではないとも感じていました。

その方が見ている世界や、その瞬間に感じている関係性に寄り添うことで、安心した表情や自然な笑顔につながることもあったからです。

その時々で関係性が変わっていく不思議さに、戸惑うこともありましたが、それもその方の世界の中で自然に生まれている関わりだったのだと思います。

まるで、一人で何役もこなしている“女優”のようだなと感じることもありました。

認知症という言葉だけでは表せない、その方らしい感情や表現が、そこには確かにありました。

「大変」だけではない認知症ケア

認知症ケアというと、「大変」「苦しい」というイメージを持たれることも少なくありません。

実際に、うまくいかないことや悩むこともたくさんあります。

それでも、その中には自然と笑ってしまう瞬間や、「この仕事好きだな」と感じる時間が確かにありました。

以前、特別養護老人ホームへ挨拶に行った際、久しぶりに高齢者の方と関わる時間がありました。

その空気感に自然と引き込まれ、「やっぱり好きだな」と感じた瞬間がありました。

認知症ケアの現場には、大変さだけではない、人と人とのつながりがあります。

おわりに

認知症ケアの現場には、その方なりの表現や、その方らしい関わりがあります。

笑顔、冗談、何気ない会話。

そんな日常の小さなやり取りの中に、人と人とのつながりの深さを感じることが何度もありました。

今は現場から離れていますが、その時に感じたあたたかさは、今も自分の中に残り続けています。

認知症ケアは、決して「大変」だけではありません。

そこには、人のぬくもりや、思わず笑ってしまうような時間も、確かに存在していました。